『ブログDEロードショー』

2011年8月10日 (水)

映画『アメリ』

Photo_2第21回『ブログDEロードショー』です。今回の作品は皆で選んだ第2回リクエスト企画作品!ということで、普段あまり見ないような作品を初めて鑑賞することになりました。この、スプーン持ってる写真、当時気になっていましたが、クリームブリュレをプチッといくシーンは印象的ですね。

劇中非常にあま~いシーンで食べたくなりました。映画の影響力で流行ったのも分かる気がします。

これ、スプーン持ってる写真なので、最初はてっきりスプーン曲げが趣味な怪しい女の子の映画とばかり思い込んでいました。まぁ、アメリさん、怪しいことは怪しいです。

育った環境により孤独なまでに空想の世界で生きる彼女。悪人ではないようですがストーカーまがいの行動に走ったり、なかなかの不思議ちゃんで、でもどことなく共感してしまうシーンもありで、憎めないかわいらしさがある。

監督は『エイリアン4』、『ロング・エンゲージメント』のジャン=ピエール・ジュネ。同じくオドレイ・トトゥ主演の後者は好きな映画で重かった印象がありますが、このアメリは独特の世界観があり、オドレイ・トトゥが別人に見えました。

真面目に見ていると途中眠たくなりますが、妄想系コメディとして可笑しくて、パリの街並が世界名作劇場やジブリアニメなんかを想起させるところもあり、美術が綺麗です。

この映画で一番共感ポイントが高いのは「好きな異性に告白できないもどかしさ」といったエピソードで、後半なかなかに切ないシーンがあったのは映画の流れとして意外でした。何故にこの男なのかは謎ですが。

Photo_5自分の空想の世界で生きているのでその世界が壊れてしまうのをためらい、一歩先に進めない。そんな時、気になる男性が現れなんとかしてお近づきになりたいが近づく間際のところで止まってしまう。

何もしないでいるともう、相手の姿はなく、とめどもなく孤独感に襲われ、涙を・・「切ない」。

こういう、普遍的な恋愛エピソードがあるのですが、一筋縄ではいかないのがこのアメリで、特にあの八百屋のおっさんに一撃食らわしたシーン(電気でバチッ、ブー!!)がハイライトで笑ってしまいました。

基本、変人ばかり出てくるのでやはり真面目に考えて見てしまうとつらい映画です。しかしながら、共感できるシーンが随所で発見できるのも面白い作品だと思いました。

アメリが働いていたあのお店も、ありそうな感じで印象に残っています。

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2011年7月16日 (土)

映画『ジャガーノート』

Jugger2第20回『ブログDEロードショー』です。今回の作品を選ばれたのはweb-tonbori堂ブログのtonboriさん。TSUTAYAでよく見かけた作品だったのですが、これを機会に初めて鑑賞しました。豪華客船に爆弾が仕掛けられ、捜査が始まるが果たして結末は・・?といった内容です。

キャッチは〈脱出不可能な暴風雨の北大西洋にメガトン級の爆弾が時を刻む!千二百人の命と共に揺れる豪華客船ブリタニック号!〉

ジャケットの印象とタイトルだけだと、最初はてっきり戦争アクションものだと思っていましたが、中身は船上での爆弾処理の話でした。

まず、アンソニー・ホプキンスが「若っ!!」ていうところに惹かれました(笑)爆弾が仕掛けられた船にはその警部の愛する妻子が乗っていることだし、かなり重要な捜査一員として活躍しまくるのだろうと思いながら観ていたのですが、彼が活躍するのは陸上での容疑者絞込みまでで、後半メインになるのはほぼ船上で爆弾処理をするベテランのファロン(リチャード・ハリス)の姿

警部の家族が重要な複線となると思いましたがそうでもなく、船長の愛人らしき女性が出てきますが何をしているのかよく分からず、とにかく印象的なのは爆弾処理における緊迫感でした。

もしかして『スピード2』のオリジナル??なんてことも一瞬感じましたが、結構真面目なつくりの映画です。

CGを多用したゴージャスなブロックバスター映画に馴染んでしまっている私には地味に映りましたが、返ってリアルに感じられ、現代にも通じる、爆弾って恐ろしいものだということをまた考えさせられました。

どうしても違和感がある部分として、犯人がファロンの元同僚で突然出てくるのはやや変に見えました。このシークエンスだけはどうしても納得がいかなかったので2度観ましたが、やっぱり流れとして違和感あります。もう少し説明が欲しかった気がします。

後半このあたりにくると、完全にアンソニー・ホプキンスのことは忘れてしまっています。

Jugger1明日があるかないかの仕事、極限下での爆弾処理における緊張感はひしひしと伝わってきて流石に見応えありました。これまでのアクション映画で見慣れているような爆弾処理のシーンでも、今回のは妙にリアルです。あのドラム缶は船を沈めるほどの威力があるようには見えなかったのですが、それこそがまさにリアルで、部下を失うシーンなど悲しかったです。

現代の映画(TV映画)だと、爆発後の現場のシーンを死体などをドライに挿入したりしそうですが、そういうのもなく、観客への配慮かもしれませんが逆に想像力を掻き立てます。

赤か、青か、そうか、この映画が原点なのかとうなずきつつ、爆弾処理のシーンにやられました。

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2011年5月22日 (日)

映画『トワイライトゾーン 超次元の体験』

Twilightzonemovie第19回『ブログDEロードショー』です。今回の作品は私が選ばさせて頂きました(当告知記事はこちら)。今回初めての鑑賞となりますが、有名なタイトルであり、あのオープニングの「トゥルルル・トゥルルル」っていうのはどこかで聴いた事があります。

最初はプロローグで始まり、ふたりの男が乗った車が出てきて夜の田舎道を走っています。音楽に合わせて車内で歌っておられますが、テープが切れて困った彼ら。テープで音楽なんていつの時代やねんということですが、時はまさに80年代。テープが切れる体験は自分もありますね、古き良き時代を感じます。

運転手はいきなり恐怖体験ごっこをしだして車のライトを消したり。となりにいるダン・エイクロイドは「本当に怖いものを見たいか?」と問いだし、ふりむくと・・
ギャー!!な展開。かなりベタですが、ここで笑いと恐怖が同居したトワイライトゾーンの世界への入り口となるのでした。

掴みはばっちりだったかもしれません。ナレーションが入り、どこでもドアーが出てきて目玉・・目玉のおやじは出てこなかったな・・ タイトルが入ります。こういう始まり方は好きですw

4話構成のオムニバスで、導入部に主人公たちのキャラクターの解説がはいります。話が分かりやすくて楽しめます。

第1話はジョン・ランディスがヴィク・モローを主演に、人種差別的発言の多いすねたサラリーマンの恐怖体験を描いたものになっていて、相手の立場になると自分はどういう思いをするのかという、視点の切り換えがテーマになっていました。バーで愚痴って、外へ出てみると何故がナチスの警備隊らしき人物にいたぶられ、次はKKKらしき団体に、そしていつの間にかベトナム戦争の地へ。この作品の主人公のような、いちびった会社員の人物はいるだろうな~というところで見入ってしまいました。

Twilightzonethemovie5第2話は老人ホームが舞台。監督はスピルバーグで、ジェリー・ゴールドスミスの音楽が輝いているエピソードです。老後を、どのようにして暮らすのか。年を取ると足腰に負担がかかり、心臓にもよくないので遊びまわることが出来ない。明日くるのが楽しみで仕方がなかった子供の頃が懐かしい。そんなとき、ひとりの老人の魔法で子供の姿に戻れた。でも、若返ったからといってまた人生を歩むのは・・人生、一度きりだからこそ面白い、いつまでも気持ちは若々しく、という前向きなテーマが印象的です。

Twilightzonemovie2_4第3話は『グレムリン』のジョー・ダンテ監督による若き女教師の不思議体験。このエピソードはちょっと意味不明な笑いと不気味さがあり、グレムリンに登場してもおかしくはないコミカルなクリーチャーも出てきました。へんてこりんなファミリーと少年・・・うん、意味不明(苦笑)。何故に二階にいた姉は口が無かったのか(普通に怖い)。少年には超能力があるらしいが、その設定がいまいち生かしきれていないような気もしました。こういった不条理な世界観こそまさにトワイライトゾーンなのかも。

ここまでのエピソードはそれぞれ並程度というか、それなりに見て楽しめるTV的な作風だったと思います。劇場版でオムニバスというのは、そのつくり自体が不思議な気がするのですが、最後に「これ!」というエピソードを持ってくるのも味になるでしょう。

次の第4話が最も印象に残るものになっていて、流石に怖いですね。怖いといっても今流行りの痛々しい恐怖ではなくて、どこかシニカルな笑いがあり、演出が冴えている。

Twilightzonemovie4ジョン・リスゴー主演の第4話。『マッドマックス』のジョージ・ミラーが監督した作品。飛行機恐怖症の男が機内で外の翼の上にいる奇怪な生き物を目撃します。パニくる彼が言うことを、誰も信じてはくれない。これは、墜落する可能性のある飛行機の恐怖を化け物に置き換えた風刺だととっさに思うのですが、幻覚ネタではなく、本当に何者かが飛行機をいじくっていたというオチがあるんですね。

最後に再びダン・エイクロイドの登場。全てはこの男のいたずらか?みたいな終わり方がシュールです。

『トワイライトゾーン』は、後のファンタジー、SF、ホラー映画や日本のTV番組、コミックなどへの影響力をそこはかと感じることができる作品でした。

TVシリーズもぜひ見てみたい・・そんな気分になりました。

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2011年5月13日 (金)

第19回『ブログ DE ロードショー』のお誘い

    第19回『ブログ DE ロードショー』の告知です

同じ時期に、同じ映画を観て皆で楽しもうという企画、『ブログ DE ロードショー』の第19回目の作品をわたくし〈たまさん〉が選ばさせていただくことになりました。


Photo

企画を管理されているのは『映画鑑賞の記録』のmiriさんと『忘却エンドロール』の宵乃さん。

これまで当ブログでもいくつか鑑賞後の記事を書いておりますが、私は第11回目の『カプリコン・1』から参加させていただいております。過去の映画だと、なかなか観る気になれなかったり、観れなかったり、時間の都合などあってよい作品でも観逃す事がありますが、この企画によりいろんな作品を鑑賞する幅が広がりました。


今回は私自身が未見、もしくは記憶にない昔の作品を選択。
           映画『トワイライトゾーン 超次元の体験』(1983)です

Twilight_zone_2
※参考までに→
allcinema
         goo映画


有名なタイトルですのでご存知の方は多いかもしれません。ジョン・ランディス、スティーヴン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、ジョージ・ミラーの4大監督が手掛けたオムニバス作です。レンタル屋でSFコーナーあたりにDVDで置いてあると思います。


    鑑賞期間は5月20日(金)~22日(日)。
             
        ※時間の都合がつかない方は後日でもOK
           感想・レビューは強制ではありません。



鑑賞後、みなさんとワイワイ語り合うのが楽しみです。

ブログを書いておられない方もよろしければ一緒に観ましょう!


~では、また来週、お会いしましょう。フッフッフ。

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※5/22~追記事項・お知らせ~


レンタル屋に置いてなかったという報告がございました。

セル版ならネットで比較的安く出回っておりますので私は購入も考えましたが、地元レンタル屋2軒とも置いてありますので今回レンタルでの鑑賞になりました。

「レンタル屋でSFコーナーあたりにDVDで置いてあると思います。」と告知しましたが、レンタル屋で発見できなかったかたにはご迷惑おかけ致しました。

ネットでなら購入、もしくはレンタル(ツタヤディスカスなど)できると思います。

鑑賞は強制ではなく、自由ですので、これから見てみようかな~なんてかたは参考までによろしくお願い致します。

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2011年4月12日 (火)

映画『チアーズ! BRING IT ON』

Bringiton1『ブログDEロードショー』、リクエスト企画で選ばれた作品の感想です。元気で明るい映画、未見の作品が見たかったのでこれが選ばれて嬉しかったです。最初からロックなノリで湿気0%のカラッと爽快な映画でした。

00年製作の作品ですが、そこらへんは出てくるノリのいい当時の音楽でなんとなくわかるようになってます。

キルステン・ダンストが若いチアリーディング部のキャプテンとして出演していますが、そんなに最近の姿と変わらない感じに見えたので音楽を無視すれば最近の映画と言われても分からなかったかもしれません(それは無理がある?)。

共同作業における達成感を示す分かりやすくも楽しい題材の映画だったと思います。

監督はペイトン・リード。イエスマン“YES”は人生のパスワード』の監督さんでした。これもなんとなく分かるような気が(笑)

◎音楽で、SUM41がかかってきたりでポップ・パンクやR&B/HIPHOPど真ん中世代の若者青春作という印象が強いですが、個人的にはハードロックでWARRANTの『いけないチェリーパイ』がかかってきた時はニンマリでした。特典映像で監督が『いけないチェリーパイ』は使用料4万ドルもするから全部流せなかったと語っています。

キルステン・ダンストもいいのですが、新たに入部した女の子役がどっかで見た顔だな~と気になり後で調べると『トゥルー・コーリング』のエリザ・ドゥシュクでした。他にも出演されてるんですけど、雰囲気が違った。キルステン・ダンストはそのまんまだったのですが・・

チアリーディングなんて普段見る機会が無いので、あそこまでアクロバティックなスポーツ競技になっているとは思いませんでした。手にひらひらを持って、軽やかにステップをふんでるようなイメージでしたが、いかにもアメリカンな肉食系女子の振る舞いが凄い。男も一緒に踊るんですね。

かわいい、楽しい、パワフル。スポ根だけじゃなくて普通にラブコメとしても楽しめる作品ではなかったかなと。

もともと、主人公チームはこれまで全国選手権大会で優勝を続けていたわけで、ダメダメ部が優勝するというような展開の話ではないのですね。自身はあるのです。ところが、骨折でひとりが抜け、さらに盗作疑惑浮上、ありがちなキャラにおける部内での摩擦、キャプテンは彼氏とすったもんだと危機的状況が出てきて、後半盛り上がるのではと期待しながら見てました。

結果、盛り上がったのかどうか微妙でしたが、うまくいえませんが面白かったです。

Bringiton2黒人VS白人という対比描写がちょっと目立ちました。競技場でのたたかいで、さぁ、どっちが勝つんだろうと見ていくのですが、最後の順位があーなったのは、まぁ、順当だったのかな。キャプテン同士のやりとりも、微笑ましいものでした。

◎ロックのネタが随所であったのでそこはツボです。

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 チアーズ!

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2011年3月 1日 (火)

映画『シティ・オブ・ゴッド CIDADE DE DEUS』

Cidade_de_deus1第17回『ブログDEロードショー』です。今回の作品を選ばれたのは「嗚呼,魅惑の映画道+Σ」のhiroさん。私は初めての鑑賞になります。02年に製作された映画で、監督は『ナイロビの蜂』『ブラインドネス』のフェルナンド・メイレレス

ブラジルの映画だけに、もっとマイナー臭漂う作品かと思っていましたが、かなりつくりこまれていて実話ベースにしても後半の展開はなかなかに見応えあった。

1960年代から1980年代にかけてのリオデジャネイロ、ファヴェーラと呼ばれるスラム街が舞台の犯罪ドラマ。

物語の語り手であり、主人公となる心優しきブスカベ、冒頭からのエピソードにおけるキーマンとなるカベレイラ、映画の構成全体における悪役であり、ギャングのボスになるリトル・ダイス(後にリトル・ゼと改名) そしてその友人のべネ、リトル・ゼと後に対立することになる退役軍人の真面目なマネ、この5人が主要登場人物といったところ。

少年時代からそれぞれの人物の視点に切り替わっては話が進むのでちょっと複雑な部分はありますが、それにしてもこれだけたくさんのエピソードを詰め込んでいても混乱せずに最後まで観れたのは良かった。

その土地のしきたりや歴史の知識が無い為に、最初はとにかく、そこにいる登場人物の姿を追っかけていく感じでの鑑賞でした。どうやってこの話は収束していくのだろう?

冒頭の鶏をさばくシーンから生々しくもあり宗教的。次に登場するのは銃をかまえた多数の若者の姿。ストリートギャングと警察が路上で対立し、その中央に囲まれてしまったカメラを持つブスカベの姿に釘付け。只単にスタイリッシュなオープニングを飾っているだけだと思っていたけれど後の伏線になっていたのは面白い。

ドキュメンタリー・タッチで進行する各々の少年達の銃を構える姿が観ていて痛々しいです。足を撃たれる子供とか、「マジ泣きしてるんじゃないか?」と。実際現地の素人をつかっていたようで、そこらへんリアルに見えた。

特にリトル・ダイスに至っては少年期からかなりのワルであり、人を殺して笑っているという状態でどうしようもない。何故警察は彼らを捕まえないのか。これが結構見ていて引っ掛かるのですが、後半暴かれるようになっていて映画的にエンタメ感も盛り込んでいるように感じられました。

暴力はしたくない、作中一際真面目なマネが、家族を殺されてからリトル・ゼと敵対するようになると住民からヒーロー扱いされ、しかしながら結局本人も銀行強盗や殺人を犯すに至る、同じ穴の狢と化すところなどなんとも悲劇的。心優しき彼も、彼に家族を撃たれた少年に撃たれてしまう。復讐の連鎖か。

Cidade_de_deus2皆、家族を守る為に戦う。戦争になる。そんな中、ひとりジャーナリスティックに動く語り手のブスカベは危機的状況下でも落ち着いていて、異常な現場の中でもユニークな人物として見れた。

人が次々と死んでいく悲惨な話ですが、ラストとオープニングがうまく繋がって面白い描写になっていた。社会の暗部が描かれるけれどドライで陽気な作風であり、見終わった後味もさほど悪くない。

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2011年1月23日 (日)

映画『I am Sam アイ・アム・サム』

I_am_sam第16回『ブログDEロードショー』です。選ばれたのは「JUKEBOX」のワールダーさん。01年製作で、障害者を演じるショーン・ペンと天才子役ダコタ・ファニングの親子愛が切実に描かれた感動作。ミシェル・ファイファーのキレた演技、ローラ・ダーンの好演も見逃せない。

障害者を取り扱っているにしても、名の知れたアーティストが参加しているビートルズのカバー曲が挿入されて爽やかな空気さえ運んでくれている映画です。

以前TVで観たことがあるので、今回2回目の鑑賞になります。前は吹き替え、今回字幕版ということで、幾分か作品のニュアンスが違っていたかもしれません。ところどころ忘れているキャラクター、シークエンスもあったので改めてじっくり観れました。

ホームレスの女性の子をひとり引き取ることになった7歳の知能しか持たない父親サム(ショーン・ペン)の姿娘ルーシー(ダコタ・ファニング)の成長、理解ある人々との交流を描きつつ、障害を理由にやがて迎える娘との別離に至るまで親子の愛情をしみじみと感じる事が出来る作品。

ルーシーが7歳を迎える頃、父親よりも娘の方が知能が上回ってしまう。家庭訪問に来たソーシャルワーカーによって養育能力なしと判断されたサムだが、娘を取り戻したい彼は友人達のすすめで凄腕弁護士リタ(ミシェル・ファイファー)を訪ねるのだった。

突然子持ちになり、コーヒーもろくに入れることもできないのにスターバックスで働いているサムを見て、この周囲の寛容な姿勢に最初はなんだか違和感を覚えた

劇中出てくる人物はとてもよい人達ばかりで、「みんなして障害者を受け入れられるこんな世界いいよね~」と感じる事はできますが、私自身が擦れているのか、現実問題こんなにうまくはおさまらないのではないかと。

何故、あんなにルーシーが天才的に育ったのかも不思議で・・。隣人のアニーの助けも相当あっただろう。ルーシーのしっかりした存在が、作品を構成する全てだ、といえばそうになります。このダコタ・ファニングはほんとにかわいいです。

弁護士のリタが入ったあたりから場の雰囲気が変わり面白くなります。こんな不安定な弁護士はなんか嫌ですが、彼女自身も家庭に問題を抱えていて、サムとの交流により真の感情を露にするシーンは印象的です。 「親としての在り方とは何か」を問うている作品ではないかと。この人、随所でキレまくっているんですけど(笑)

親権をめぐってあれよあれよと裁判沙汰になっているのは変に見えました。よく引き受けたよねと。あちら側が悪人のように映って見えるのもおかしい。どんなに愛情があったとしてもルーシーの今後を考えると施設に引き取ってもらったほうがいいのではないか。

結局、里親に引き取ってもらうことになり、最後に里親ランディ役のローラ・ダーンの登場です。突然現れてその存在感に驚かされますが、彼女の演技がまた良いんです。一旦離れて暮らすことになったにも関わらず、お互いに会いに行こうとするその親子の純粋な愛情の深さにどうすることもできなくなった彼女。映画のクオリティがぐっとアップする瞬間を見た気がします。

I_am_sam2みんながみんな繋がって、ハッピーなラストを飾り、なんだかんだいって気持ちのいいエンディング。リタも子供と軌道修正した様子で。ルーシーはやはり天才。障害があるとはいえ、サムだってしたたかに生きてます。

都合のいい部分が目立ってしまい現実味を感じられない作品ですが、爽やかな感動作で映画としては面白く描かれていたと思います。

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2010年12月26日 (日)

映画『ベルリン・天使の詩 WINGS OF DESIRE』

Wingsofdesire1_3今回珍しくアート系映画を鑑賞しました。第15回『ブログDEロードショー』になる作品、選ばれたのは「シネマ・イラストレイテッド」の mardigrasさんです。 白黒のパッケージが目立つので60年代以前の映画かな(!?)と思いましたが、87年製作の西ドイツ/フランス合作となっております。

ジャンルがファンタジー、ラブストーリー、ヒューマンドラマとなっていますが、淡々と詩的にモノトーンで統一された作品であり、結構難解。まず自分から進んで観るような娯楽作ではないです。

簡単なあらすじとしては、長い歴史を天使として見届けてきたダミエル(ブルーノ・ガンツが、親友カシエルに永遠の生命を放棄して人間になりたいとする様を独特なタッチで描いているもの。

出荷された本数が少ないのか、地元のTSUTAYAでレンタル版を発見できず、一度ネットで新品を買おうかと考えました。中古DVDを立ち寄った店で見かけたのですが、それでもいい値段ついてる作品です。大概廉価版で1000円前後で買えると思っていたので「それだけに、評価が高い希少な映画なのかな」と思いました。

もう一方のよく行く地元レンタル屋で後に探すとあったので、これにて鑑賞。ミニシアター系になるのでしょうか、よく探さないと発見できません。

先に「結構難解」と書きましたが、意味深でありながら、まさに淡々と断片的に切り取ったかのシーンが続いていくので実際途中で二度ほど寝てしまいました(汗)。

はっきり分かるのは、途中サーカス団のヒロインが出てきてモノクロの映像がカラーに変わるところ。何故これまで白黒映像なのか疑問に思っていたのですが、これは天使の見る世界が白黒であり、人間の見る世界が色付きであるということなのかなとここで思いました。

ヒロインに恋をする天使。モノクロの世界がカラーに変わるとき、一気に「生きていること」を示唆するかの映像表現になっていると感じました。

困ったのは図書館の人々がたまにカメラ目線になったり、刑事コロンボが現れて天使の存在を把握していたり、あらかじめ意味合いを教えてもらわないと思い切り意味不明で終わってしまいかねないところです。

これが映画の表現手法として自由で希少であることは分かるのですが、天使が見てきた世界=作品全体から漂う俯瞰した姿勢は、鑑賞者をも俯瞰し、 「ちょっと嫌味じゃない?」とも思えてきます。正直こういう映画は苦手です。

後半のほうがストーリー性が出てきて見やすかった。老人が体験した狂気の戦場、そしてその老人たちの行く末、東西に隔てられた街並みが重いトーンを醸し出す。人間の酷な存在感を示しつつ、そんな人間になりたいとする天使。

Wingsofdesire2採算がとれずに折り畳むサーカス団、夢を追いつつ、行き場のないヒロイン、そしてロック。彼女と出会い、「生きること」を望んだダミエル・・・。印象的なのは、作中最も躍動感のあるサーカスのシーンだったかも。これがないと、かなり退屈な映画になってました(苦笑)。

もっと政治色が濃厚なのではと危惧しましたが、人間の生き様みたいなものをそこかしこで感じ取れる作品でした。カラーになった天使は、血を流す痛みさえ、喜びになるのです。

娯楽映画に浸っている私には、ある種衝撃的な映画体験となりました。

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2010年11月 7日 (日)

映画『遠い空の向こうに OCTOBER SKY』

October_2第14回「ブログDEロードショー」です。今回の作品を選ばれたのは「ピエロと魔女」のたそがれピエロさん。ジョー・ジョンストン監督の99年作で、のちにNASAのエンジニアとして活躍したホーマー・ヒッカムの自伝を基に描かれている。

“泣ける映画”のコーナーでよく見かけるタイトルのDVDだったのですが、今回初めての鑑賞になります。ホントに泣ける作品ですね。

夢を叶えようと奮闘する若かりし頃の青春ストーリーになりますが、舞台が閉鎖的な炭坑の町ということもあり、苦難が続く日々。それでも自分のやりたいことを成し遂げようとする主人公の姿に感動。また、家族や友人達など、脇役陣の演出も素晴らしいです。

少年ホーマー・ヒッカムは1957年10月にソ連で打ち上げられた人類初の人工衛星スプートニクを夜空の向こうで実際に目撃してから、自らの手でロケットを打ち上げたいと思い立ち、級友3人と共にロケット作りに着手する。

高校を卒業すれば皆、炭鉱で働くことが当たり前となっている町において、大学へ行くのはスポーツで奨学金を得た一部の者のみ。しかも、主人公ホーマー(ジェイク・ギレンホール)父親ジョン(クリス・クーパー)は炭鉱の監督・責任者であり、ロケット作りという彼らのやっていることが理解できずにいる。

こういった父子の対立関係は普遍的なテーマであると思うので時代背景が違えども誰もが共感できるようなつくりになっていると思う。

自分が目指すべき場所と大きく異なる田舎が舞台で、親は分からず屋、新しいものに取り組めば批判の対象にされる。この映画のようなしっかりした親ではないですが、自身の育った環境・状況と非常にリンクしてくるので主人公の気持ちがよく分かります。

ただ、やってることが危険ではあるんです。最初、ロケットを飛ばす時に失敗して、人がいるとんでもないところに着地する。これ、人に当たってたら洒落になりませんから、本当に危なかったですね。火災の原因にもされたり。

しかし、支えになってくれる人物はいるもので、この映画で言えば高校の物理教師のミス・ライリー(ローラ・ダーン)。校長の反発を受けながらも「科学コンテストに出品して優勝すれば、大学への奨学金が出る」と彼らを励ます。

ひとり秀才はいるものの、ホーマー含め他の3人はまるで物理の知識もなくロケット作りに取り組んでいくので面白い。勉強とか、いろいろと嫌なこともあるだろうけれど、学ぶということは興味・好奇心があって自ら「学ぶ」のであり、その為には苦手な分野さえ克服していくもの。

ロケットをつくるお金がないなら別の方法で。失敗を繰り返しながらもやがて協力者も現れ、新聞に取り上げられるほど少年4人『ロケット・ボーイズ』は有名になっていく。あの、“鉄道のシーン”は結構ハラハラもので印象的だった。『スタンド・バイ・ミー』をふと思い出しました。

アップ・ダウンが目立つ作品であり、コンテストの場面で展開がやや早く感じましたが、ラストで全てをうまくまとめているなと感じました。

October2クリス・クーパーは流石の演技で、責任感のある父親像をうまく演じられていると思います。最後のシーン、親と子の距離感の演出が抜群で、セリフがまた泣かせます。炭鉱夫として地下へ降りる父、空へ向かう子・・・単なる情緒的に弱い人間関係で終わらないところがよい。

エンディング、及びメイキングで実際のホーマー・ヒッカムが見れて感動一入です。

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↓原作本

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時間とって読んでみよう。

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2010年10月 8日 (金)

映画『アマデウス』

Photo_2誰もが知っている、聴いたことがあるモーツァルトの曲。といっても、私はクラシック自体普段聴く事がないし『トルコ行進曲』くらいしか今となっては覚えていない。まして彼の人柄などまるで興味が無かった。

今回『ラジオ・ヒッチコック』のロッカリアさんが選ばれた第13回「ブログDEロードショー」作の『アマデウス』を拝見し、意外なモーツァルトの一面を知ってちと驚きました。

しかし、前回の『ゴッドファーザー』から早一ヶ月・・早いです。どんどん日々が加速しているような・・映画鑑賞記録としては良い機会になっています。

さて、本作の内容ですが、まったくどのような作品なのか前知識もなくいきなり鑑賞しましたが、やはり驚いたのはモーツァルトのキャラクター。若いし、冗談かますし、甲高い声でよく笑うし、で、なんと短命だったことか

中学校の授業かなんかで習いましたっけ?こんな人物でしたっけ!?

タイトルの『アマデウス』はモーツァルトのミドル・ネーム。そんなこともてっきり忘れてしまっていたのですが、とにかくモーツァルトありきの豪華絢爛な映画であることは間違いない。

冒頭から首切ってもだえ苦しむ老いた宮廷音楽家サリエリが登場します。最初は彼がモーツァルトだと思ってしまいました(汗) さらに、「死んだのか!!?」と思いましたが、精神病棟へ移された彼はピアノに向かい、何やら神父に語りかけていきます。

物語は、側近としてサリエリが見てきた過去のモーツァルトの姿を追いかけるような内容になっていて、冒頭の語りでは「私が彼を殺した」というようなシチュエーションになってます。生前の姿を追っかけてるわけですね。

それで、いつ死ぬんだ?何故死ぬんだ?ということになり、なんとなく不穏な物語が進行していきます。ミステリーです。

ちゃらちゃらした若き天才モーツァルトを見ているサリエリは金も分別もある教育者でありながら彼に嫉妬している様子。モーツァルトの才能を高く評価しているが、自分に出来ないことを神業なまでに成し遂げるのが気に食わない。ガキっぽく、自由きままに行動する彼に嫌~な感情を抱いている。

表向きは味方のように接しているが、裏工作を仕掛け、嫁を利用したり、召し使いを潜入させたり、サリエリも随分嫌な男ではあります。

当時の音楽は政治に多大な影響力があってか、いくら芸術性を求めたところで社会性をも無視することは出来ず、自分の思い通りの作品を世に出せないモーツァルトの苦悩などはよく分かります。サリエリの微妙な裏工作含め、それらが彼の死へと繋がっていくのだった。

今ほど表現の自由がきかなかった時代の話かもしれませんが、この大衆性と独自性の狭間でもがき苦しんでいるミュージシャンというのは結構いる(!?)と思うので、そこは普遍的なテーマではなかったかなと思います。自我・アーティスト志向が強ければ強いほどビジネスに向いていなかったり・・・まぁ、いろいろでしょうけど。

Photo_4元より、本当にモーツァルトは あんな人物だったのかと思うと怪しいし、サリエリもかなり映画的に作られたキャラクターだろうからフィクションとして観たほうがよいのかも。モーツァルトが創りだす音楽・ステージを楽しみ、独特な生活様式を体感する。

サリエリ然り、モーツァルト然り、父親や嫁など含めて彼らの人間関係というのは案外どこでもありそうな気がするので共感できるものでした。

全体的にやるせなさが漂っているのでいまひとつ盛り上がらず、中弛みするところがあったのが難点かな。これは時代性と、死を前提とした話なので仕方がないのかもしれません。この映画を観るとモーツァルトへ興味が沸くし、音楽も改めて聴こうかという気になります。84年の映画のわりには映像が綺麗で、てっきり最初は90年代の作品だと勘違いしていました(苦笑)。

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