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2011年2月15日 (火)

映画『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』

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太平洋戦争末期、玉砕の島サイパンが舞台となる本作は、実際に日本軍と銃を交えた元アメリカ海兵隊員ドン・ジョーンズの原作『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』を基に製作された。その、大場栄大尉とはいったいどういう人物なのか。

まず、全体的な映画の印象はほぼ予告編の通りといった感じで、2時間じっくり鑑賞できました。アメリカ軍の圧倒的な兵力によりもはや日本の敗戦は決定的となる中、“フォックス”と呼ばれ畏れられる日本人

何故、彼はそこまでして賞賛されるのか。サイパン島中部にそびえるタッポーチョ山に潜んでは民間人を守り、わずか47人の兵で45,000人もの米軍を翻弄した部隊の指揮官。それが竹野内豊演じる大場栄大尉である。

最初の竹野内さんの登場してきた印象だと、どうも戦時中にいた日本人とは思えないようなイケメンに見え、これは、ちょっと戦争映画としてはやばいんじゃないかと危惧してしまったのですが、いわゆるバンザイ突撃から生き延び、山に入ってから徐々に顔付きが本当の軍人ではないかと思わせるようなものになっていって大場栄大尉の人物像に惹きこまれるようになりました。

この、前半のシークエンスだけだと皆 玉砕命令で散っていく中で、なんとなく彼が生き残り、やくざ者の好戦的な一等兵堀内(唐沢寿明)と出会い、また、他の兵士と合流する中でも実際の日本の動きを把握できずに勘違いをしては逃げ回っている印象さえ実はあった

これは正直意外な展開で肩透かしを食らう部分にならなくもないのですが、そりゃたった47名の兵士が勝てるわけはなく、むしろあんな過酷な状況下で生き延びようとする事こそが奇跡に近いことなのかもしれないと思うようになっていきます。

戦争という異常な状況で、まして軍人としてどうするのか。
ニュースの特番で“バンザイクリフ”という、民間人が飛び降り自殺をする崖の当時の実写映像が流れて脳裏に焼きついています。天皇バンザイといって自決するのです。バンザイ突撃も、自決を覚悟で突撃するわけですが、普通に考えると、「もう負けは決まっているのだからさっさと投降して日本に帰ろうよ」と見ているこちらは思います。

これは、捕虜になるよりは自決したほうが美徳であり名誉な戦死と考えられていたからですが、今回の映画の描かれ方ではアメリカ側の視点も大幅含んで撮影されており、自殺をする日本人に対して理解に苦しむ上官(ダニエル・ボールドウィン)の姿も出てきます。また、上官が別の人物(トリート・ウィリアムズ)に変わると、兵士の動きも変わってくる。

日本側からだけの視点で描くとアメリカ側は悪魔のようにしか映らない。よって、アメリカ側の視点を取り入れられているので客観的に戦況を見ることが出来ます。

日本に留学経験のあるルイス大尉(ショーン・マクゴーウァン)は大場栄大尉及び日本人に理解を示す良い語り口になっていて、日米双方の視点で進行する話は戦争映画にしても見ていてさほど気分の悪くなるものではありません。

本当の戦況を理解するには慎重にいかなければならない。大場栄大尉の個人としての思惑、怒りや憎しみ、葛藤、生きて日本に帰ろうとする気持ちはスクリーンから充分感じ取れることが出来て、竹野内さんの抑制の効いた演出はうまく描かれていたのではないかと最終的には思うようになりました。

もっとも、実際にあの時代に生まれ、あの場所に行って見ないと分かるものではなく、想像でしかありません。

そこは、自分ならウロウロ逃げ回っていただけかもしれない、自決するかもしれない、家族をアメリカ兵に殺された看護婦(井上真央)のように敵意剥き出しになっていたかもしれないし、投降するなど非国民だ!とか言っている木谷曹長(山田孝行)のようになっていたかもしれない。

それぞれのキャラクターから窺い知ることは多分にあり、これはアメリカ兵の視点からも例外ではありません。

ちょっと最初、ルイス大尉は日本を美化しすぎるんじゃないかというセリフが目立って大場大尉同様こちらも違和感があったのですが、物語を進んで見て行くと最後の最後まで落ち着いた表情で好印象になった。次第に、それぞれのキャラクターの印象がまとまっていくというのもこの映画の特徴だったと思います。

Photo島から東京に空襲へいくB29の重量感。それを目撃する大場大尉。ラスト、日本が無条件降伏したことを理解し、山から投降する兵士達の姿にはなかなかに震えるものがあるというか、アメリカ兵と向き合ったときは涙ものです。あの、大場大尉の刀の振る舞いに驚く兵士が滑稽で可笑しかった。それと、赤ん坊を抱えて海を見つめる看護婦が、どうしようもない心境だったようで、それを見る大場大尉にまた思慮深さを感じました。

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コメント

こんばんは!お久しぶりです〜
DVDでみました。
竹野内豊はイケメンすぎて、はじめ浮いた感じでしたが^^;
徐々に軍人らしい顔つきになってきましたね。
47名の兵士がよく生き延びました・・・
日米両方の視点で描かれていたのがよかったですね。

投稿: アイマック | 2011年8月27日 (土) 23時47分

アイマックさん、
お久しぶりです!
イケメンだから、観やすかったかも。
撮影現場も大変だったようで、
だんだん軍人らしく見えたように思います。
日米双方の視点ですが、
描ききれていないシークエンスは多々あるでしょうし、
また違った戦争映画も
つくって欲しいです。

投稿: たまさん(主) | 2011年9月 2日 (金) 22時45分

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