映画『あの日の指輪を待つきみへ CLOSING THE RING』
なかなか良い映画です。こんな想いを抱えたまま、年を取ることってあるのだろうかとちょっと考えました。クリストファー・プラマーの名演に拍手。ラスト、彼の前で、涙を流す“彼女”の存在が物語の軸になる。
老人の語り口で回想形式になるのは『タイタニック』(97)や『きみに読む物語』(04)と似ていますが、その若き日は戦時中であり、戦死した彼・テディを想い続ける老婆・エセルと当時からの友人・ジャック、さらに家族達の揺れ動く心が涙ながらに綴られていきます。
戦争と恋愛を絡めて描く映画としては『ロング・エンゲージメント』(04)あたりを思い出しますが、あそこまで戦場の凄惨な場面があるわけでもなく、基本はラブ・ストーリーが主軸で男女間の友情の物語でもある。
男の心情というものがとても印象に残る場面があります。彼女のことを想っているのに、ずーっとそばで、友人のままで過ごしてきた老人の姿が映し出される。こんなことって、あるのかなと。彼女は彼女で、亡くなった彼の事を想い続けている。
前半は登場人物の心理がやや雑に感じます。若き日に、戦争で恋人を亡くした彼女は後に別の男性と結婚し、子を授かった。彼に愛され、幸せだったはずのその老婆は言う。「私の人生は21歳のときに終わった」と。娘さんは母の気持ちを始めて知ります。非常にショッキングな告白です。ひどい。
B17爆撃機に乗り込み戦地へ赴くことになる仲良し3人のテディ、ジャック、チャック。エセルの恋人だったテディは「もし俺に何かあったら、彼女のことを頼む」なんてことをジャック達に言っていた。
50年以上も前に墜落死したアメリカ兵の結婚指輪がベルファストの丘で発見され、その実話を元に映画化されたといいます。アメリカとアイルランドの話がひとつの指輪で繋がり、過去と現在が交差する。
アイルランドの内戦の話が付いてきたのは蛇足で、良く分からなかったのですが、 〈2つの時代と2つの大陸が、ひとつの指輪によって結びついていく〉っていう主題は分かりやすく、うまくまとまっていたと思います。
惜しいのは、やはりエセルの最初のダラダラした告白シーン。かたや、男達の心理も微妙で、もう少し丁寧に描かれなかったのかと思います。戦時中であったが故なのかもしれませんが、前半はどうしても安っぽい印象が拭えなかった。
只、そこは現代と結びつき、家族達の心境も含め少しずつ見応えのあるものになっていく。娘さんの心情もクローズ・アップされます。
心を閉ざしていた老婆は指輪の発見により若き日の悲恋に決着を付ける時が来た。解放された彼女は新しい人生を迎えることになる。主演の老婆は大女優シャーリー・マクレーン、期待の人気若手女優ミーシャ・バートンが若きエセルを演じます。なんと彼女、『シックス・センス』(99)に出ていたあの“少女”です。
この映画はラストが全て、あの感動的なシーンがあるからこそ、良い映画だね、と言える。 人の出会いは数奇なもので、こういう半世紀を越えた物語は今もどこかで存在しているのかもしれません。
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