映画『P.S.アイラヴユー』
どうしようかと悩みつつ、徳永英明の日本語テーマ曲が脳裏に引っ掛かってまして、京都行った帰り際レイトショーで見てきました。公開から一ヶ月近く経ってから観たのですが観客は意外と多く、やはりというか、女性客が多いです。
亡くなった夫から届けられる手紙。「翌日から何らかの方法で届く手紙の指示に従って欲しい」というボイスメッセージが入ったプレゼント、そこから若き未亡人の人生を目撃することになります。
未亡人といえば高橋留美子の漫画『めぞん一刻』をふと思い出します。あれは五代くんが響子さんを振り向かす為に奮闘してましたけど、この映画では五代君的なキャラはいたけど、惣一郎さん的なキャラは主人公の心に深く生き続けていて惣一郎さんに成り変わるパートナーが現れそうになるまでが描かれますが、鈍感でおっとりしたキャラの響子さんとはかなり違うタイプの主人公にドギマギします。あ、前置きが長いね、
超常的な話でなければ手紙を届けているのは身内の誰か。それはラストで明かされますがミスリードを感じさせる部分があり、物語の流れとしてちょっと回りくどいかな~と思うところもありました。重要なのは人の気持ちですので、そこに感情移入できるかどうか。
子供を持てないことに苛立ちを隠せない妻ホリー(ヒラリー・スワンク)と体格の良いアイルランド男の夫ジェリー(ジェラルド・バトラー)の痴話喧嘩から物語が始まります。かなりS対Sな感じでいきなり壮絶なバトルが繰り広げられ、ややドン引き状態になりました。まぁ、これくらいの夫婦喧嘩はどこぞの家庭でもあるのではないかと想像しますが、なんせ『ミリオンダラー・ベイビー』vs『300〈スリーハンドレッド〉』ですから、こんな喧嘩は収集つかんでしょうと思いつつ、すぐに仲直りするおふたり。
その後すぐにジェリーが亡くなった上での設定になり話が進みます。故に手紙と思い出がリンクしてホリーの夫への想い、幻影が浮き彫りになり、戸惑いや希望が綴られていく。
原作者のセシリア・アハーンはアイルランドの元首相令嬢であるらしく、21歳のときにこの原作本を書き上げた。若くしてよくこのような物語を書けたねーと感心します。ニュース記事をみると何故主人公を実年齢より10歳近く上にしたかについて語っている。
「ホリーは友だちより少し早く結婚のスタートを切っていたのに、夫の死で取り残された感じになる。この先孤独に生きるのか、何か新しいスタートを切るのか。よく30歳はパニックエイジという言い方があって、大人なんだからいろいろと決断しなくちゃという年齢で、その直前に夫を亡くしたことに意味合いがあるんです」
監督は『マディソン郡の橋』の脚本家であるリチャード・ラグラベネーズ。ヒラリー・スワンクとは『フリーダム・ライターズ』でもコンビを組んだ。
どちらかといえば女性向きの映画。ホリーのママや親友などもなかなかに濃いキャラクタ ーでして、女のホンネをまざまざと見せられたような作品でした。これはアメリカ人と日本人のギャップもかなりあると思えたんですけど、どうなんでしょう。原作を読んでないので分かりませんが、結構アメリカ向けに脚色されているような気がします。
ホリーのような女性はあまりタイプではないし、感情移入できないから終始微妙ではありました。夫の死で打ちひしがれ、彼女はグダグダになるんですね。グダグダのボロボロな心を引きずって、「いつまでグダグダなんじゃい!」と、言いたくもなります。あの、アイルランド旅行の行きずり男との出会いとその一夜とか、何故にあそこであーなるのか、それはそれでよかったんでしょうか。
ジェリーとの出会いの場面は犬も含めて印象に残っている。あそこが人生の分岐点でもあったわけだし。
陽気で気前が良く、音楽でノリノリなアイルランド人の印象はそのまんまだった気がします。誰かに何かをしてあげたいという気持ちになれるところではジェリーが分かりやすかったですけど、バーテンダーのダニエル(ハリー・コニック・Jr)がうまく話に溶け込んでいていい意味で、意外なキャスティングでした。
しっかし、ママ役のキャシー・ベイツが出てきたときは怖かったです。あまりにも映画『ミザリー』の印象が強いもんで・・。けれども、ちゃんと最後に話をまとめてくれますから、そこはよかったかな。「ず~っと、泣いとった~」なんて声もちらほらと聞こえます。原作者の理想の男性像は体格のがっしりとした、包容力のある男性像なのかなと。
この映画で描かれる女性像はかなり強気です。男性の束縛に打ちひしがられ続ける女性をみているのは辛くなります。冒頭の痴話喧嘩にせよ、ジェリーはホントにホリーを愛していたのかと疑問に思えた、というのもあります。新しい人生に踏み出す後押しの手紙なら、一通の遺書でもいいじゃないかと真面目に考えてしまいました。そうなると話にならないですけどね~、、
自分が予感したハッピーエンドとは違ったのでちょっとしっくりこなかったです。五代君は報われず、惣一郎さんに似たパートナーが最後で現れた。キャラのタイプは違えども、敏感な主人公の動きを見ているとそんな感じでした。
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