映画『アメリカを売った男 BREACH』
FBIに務めるエリック・オニール(ライアン・フィリップ)は 捜査官への昇進を目指す若き訓練生。家へ帰れば愛妻が待っている。そんな彼に上司のケイト・バロウズ(ローラ・リニー)から国内一のロシア通であり、コンピューターのエキスパートであるロバート・ハンセン捜査官(クリス・クーパー)の補佐、監視が命じられる。
ハンセンには性的倒錯、セクハラ疑惑があるようだが、ここで真の目的は告げられていない。
前半は淡々と上司と部下の人間模様が映し出され、FBI捜査官とはいえ至って平凡、家族ぐるみの付き合いさえ普通に出てくるので物語としては退屈な印象です。しかし、真の目的が告げられていなかった理由はここにあった。
エリックは家族から愛されている真面目なハンセンを見るに付け彼のことを信頼するようになっているが、そうなるようにワザと仕向けたのがバロウズ捜査官であり、そこでエリックはハンセンの衝撃の真実=正体を告げられる。
なんと、彼は20年に渡り自国の国家機密をソ連/ロシアに漏らすスパイであったのだ。2001年2月、実際の司法長官の記者会見でハンセン逮捕が告げられる場面が冒頭で出てきますが、この作品はそこから遡ること2ヶ月前からストーリーが始まる、事実を忠実に再現したという映画です。
エリック・オニール本人が特別顧問として作品に関わっている。
ハンセンの部室には既に監視カメラ、盗聴器、動作センサーが張り巡らされ、莫大な容疑を晴らすために50名体制で捜査本部が敷かれていた。
最初は地味な展開でしたが彼の正体が明かされてからというもの、ハラハラ・ドキドキな動揺・葛藤・知能戦が繰り広げられグイグイと作品世界に引き込まれていきます。
愛し愛される家族がいて、普通にまともな生活を送っているように見えるハンセンが何故、スパイ活動に常時するようになったのか。金の為?
逮捕時に彼が語ったのは『人間のエゴ』だという。バカバカしい、意味の無いものとも言う。飽くなき追求、認められたいと願う存在意義ではなかったのでは。自分の居場所を探している誰の心でもあったかもしれない。
それはエリックも同じだ。妻にも極秘にとハンセンの監視を余儀なくされ、仕事をしていた彼は捜査官への道を目指していた。ところがハンセン逮捕後に取った行動は辞職。辞めなければ捜査官になること確実であるはずなのに何も求めず妻の下へ帰っていく。
バロウズ捜査官が勧めるとおり既婚者も多い職業だし、彼なら辞めなくてもやっていける だろう。しかしながら、人を欺いて生きる現行の仕事を辞し、彼女との生活を望んだ彼の気持ちには、ハラハラ・ドキドキな展開の後にもホッとした感じです。
派手なアクションとか、ロシア側の動きとかはほとんど無くて退屈なところがあったものの、個人の心理に焦点を置いた見応えアリの作品でした。
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アメリカを売った男 販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン |
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