映画『フィクサー MICHAEL CLAYTON』
弁護士が活躍する映画は好きなもので傑作も多々ありますが、今回の作品はやや血色が違います。
ジョージ・クルーニー主演のこの映画、彼の役どころは『フィクサー』というもみ消し専門弁護士。
大手に所属しながらも法廷に立つことはなく、数々のトラブル、ゴタゴタを処理するいわば裏方のお仕事。“もみ消し”なんて響きはあまり良くないですが、徹底した悪事を働くわけでもなく、正義と私欲の葛藤があるグレーゾーンに生きている仕事人。
キャリアに不満たらたら、このままでは将来がやばい。在職15年にもかかわらず共同経営者に昇進することもなく、今後の人生が不安である。故に従兄弟と始めた飲食店経営にも失敗し8万ドルの借金を抱えている。
40過ぎて財産0。年金がもらえない・・なんて話がやたらとリアルで私まで将来を一緒に考えてしまいました。まったく同じ境遇ではないにしろ、彼の立ち位置に共感する人は結構いるんじゃないでしょうか。
話は巨大農薬会社U・ノースの3000億円の集団訴訟に携わる人々の群像劇。マイケル(ジョージ・クルーニー)と同僚である被告側(U・ノース社)のチーフ弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)が原告側(農薬に汚染された被害者)に肩入れしてしまったことで起こる妨害工作とドラマに次ぐドラマが展開。被告側の企業内弁護士カレン(ティルダ・スウィントン)の精神的重圧や葛藤、偽装工作まで描かれていて重いテーマの社会派スリラーとなっていました。
いずれの人物も主役級、特にアーサーは「彼こそが主役では」と思える程に好感のある人物でした。ちょっと、あの『素っ裸事件』はよく分からなかったですが、一線で働く仕事人の重圧は想像を絶するものなのかなぁと、冷静に観ておりました。カレンも然りです。
マイケルの家族ドラマも盛り込まれていて感動的。息子との会話、警察官である弟との反目、従兄弟との距離感などもなんか他人事のように思えず。
冒頭のとあるシーンから4日前にさかのぼり、最初はどの人物が何者なのかさえいまいち把握できなかった。しかしストーリーが進むにつれて全体像が分かってくる。難解なところは意外と無かったです。最初のシーンがラストで見事に繫がる構成力もいい。上司マーティ(シドニー・ポラック)からマイケルへの“8万ドル手渡し”のシーンでもう話が終わってしまうのではないか・・と思っていたら、忘れかけていた冒頭の『爆破』シーンへ。心境は複雑なようですが、命を狙われた彼の最後の反撃には胸がすくものがありました。
巨大企業の腐敗・陰謀をみせつつ、組織内に生きる個人の思惑は様々であり、人間の本質に迫る作品。それは限りなくグレーゾーン。~NYの大手法律事務所があんなにドデカイ組織だとは驚きでした。いったい中で何が起こっているのか、、最後の最後でカレンとマイケルの対面です。なんか、鳥肌が立ちそうでした。ティルダ・スウィントンのなんともいえない表情とか、強烈。完璧なまでに振る舞う知的キャリア・ウーマンが一気に狼狽する姿。
各々の演技に釘付けになる大変見応えのある傑作サスペンス映画でした。事態が収拾し、どこへ向かうのか、タクシーに乗ったクルーニーの表情が少しずつ和らいでいたのが印象に残っております。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 12年ぶりの真実(2024.07.22)
- 映画『ガタカ』(2012.02.20)
- ご無沙汰です(2011.11.22)
- 寝る前にチャック(2011.09.20)
- 映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦 BATTLE LOS ANGELS』(2011.09.19)
コメント
こんにちは。
なかなかシブくて良い作品でしたね。
日本とアメリカではそもそも弁護士の数から訴訟の数までケタ違い。
巨大組織は普通なのかもしれませんね。
あのあと・・・気になりますが、生きてはいるんじゃないかな?(笑)
投稿: たいむ | 2008年4月20日 (日) 10時16分
たいむさん、
クルー兄、シブかったです。
あのあと、またいろいろと大変そうですけど、
多分生きているでしょうね(笑)
投稿: たまさん(主) | 2008年4月20日 (日) 22時54分