映画『キングダムー見えざる敵ー』
9.11事件において、実行犯とされる19人中15人がサウジ人といわれるが真相はさておき、映画の冒頭で’38年に石油が発見され、後に石油大国となるサウジアラビアとアメリカの関係がそこに至るまで簡潔に示される。
これはフィクションかそれとも現実か。テロの恐怖の核心に迫るハリウッド大作。
『ヒート』『インサイダー』『コラテラル』などで重厚な男のドラマを描いたマイケル・マンが製作に当たっているということで気になっていた作品ですが、緊迫感のあるサスペンスとスリリングなアクション、友情や家族愛が盛り込まれたドラマはやはり見応えのあるものでした。
監督のピーター・バーグと脚本家であるマシュー・マイケル・カーナハンにも今後要注目です。
サウジアラビアにある石油会社の外国人居住区。家族で賑わう一見平和な場で、のっけから衝撃的な自爆テロ・大規模な爆破事件が発生し呆気に取られる。FBIの4人のチームが現地に向かい、サウジ警察の大佐の協力の下に本格的な捜査を開始。テロ首謀者はアルカイダのメンバーだと推察する。
これは’96年にホバル・タワーで起こったイスラム過激派武装グループによる反米テロ事件をモチーフに描かれているとのことです。
前半の捜査劇から後半のカーチェイス、壮絶な銃撃戦。このFBIチームが滅法強い。まったく違う文化圏に乗り込み、暴走するアメリカ人の短絡的なアクション映画になりかねないかと一瞬思ったが、ラストに登場する“あるセリフ”が全てを物語る。
子供は生まれ育つ環境を選べない。自分がもしこのような環境下で育ち、家族を思えばどういう行動を取るか。もしかしたら自分もこうなったかも知れない。
そんな恐怖心に駆られてしまった。なんて悲しい現実。
難しい政治的背景もあるが、人として生きていく上で根本的な部分が映画ではクローズ・アップされているので、非常に考えさせられます。机上でいくら理想論を述べようが、そんなものは通用しない。彼らには常にリアルなのである。
宗教と伝統、そして近代化への矛盾が引き起こす憎しみの連鎖。この作品は一級のエンタメ作に見えて、社会という現実を浮き彫りにし、人の感情と知性に強く訴えかける映画。日本人とて、例外ではなかった。
「面白い」というよりか、圧倒的なパワーを感じる、見応えのある映画でした。
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コメント
こんばんは〜
銃撃戦、カーチェイスは迫力ありましたねー。
カメラワークはドキュメンタリー観てるようで、どきどきしました。
>宗教と伝統、そして近代化への矛盾が引き起こす憎しみの連鎖。
テロはなくならないってことが空しくなりますよ。
サウジという国のことも勉強になりました。
おっしゃるように見応えのある映画でしたね!
投稿: アイマック | 2007年11月 7日 (水) 23時43分
アイマックさん、いつもありがとうございます。
銃撃戦、カーチェイス、ドキュメンタリー風のカメラワークはどこかマイケル・マンの作品群に共通していました。
結構勉強になる、凄い映画でした。
投稿: たまさん(主) | 2007年11月 9日 (金) 14時43分