映画『バベル』
『バベル』というタイトルを友人から最初に聞いたときは、またSFアドベンチャー大作でもやるのかなと思っていましたが、予告編を見て監督がアレハンドロだと分かり、ちょっと沈んだ記憶があります。前作『21グラム』が悪くはなくても重かったので。
ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナルという国際スターに日本からは役所広司が登場。映画『氷の微笑』を超えたといわれる菊地凛子の問題のシーンも話題で、旧約聖書のモチーフによるスケール感よりも凛子スケールの方が先走っている。
モロッコ、東京、メキシコと3大陸横断の旅に4つの家族のエピソードが盛り込まれる。いずれも一発の銃弾が繋げた世界。
◎日本に住むヤスジロー(役所)の所有していた猟銃がモロッコの子供である兄弟の手に渡り、事件を引き起こす。弟のユセフが撃った弾がバスに乗っていたアメリカ人リチャード(ブラピ)の妻スーザン(ケイト)に当たったのだ。2人の子供を預かるメキシコ人乳母アメリアは息子の結婚式に出席するため甥のサンチャゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)の車でメキシコに向かうが、ここでも悲劇的な連鎖が続く。以下、ネタバレです↓
なんとも身勝手な登場人物の設定で微妙。人間だれしも一時の感情などでミスをしたり落ち込んだりするものだと思いますが、映画でこれを延々見せられたりするとこちらまで疲れてしまい苦痛です。しかも大陸を股に掛け、4つの家族の苦悩を時間軸シャッフルしまくって進行させるのでこんな旅は車酔いもほどほどに目眩を起こします。劇中どの人物にもあまり感情移入できないままにラストを迎えてしまいました。
何でバスを撃つか!とか、子供残して何で旅行するか!!とか、甥はどこへいったのじゃ、オイオイ!!!とか。
銃をキーワードに、ご都合主義で物語が展開する度にオィオィオィと泣きそうになってしまいます。コミュニケーションの問題と銃批判をテーマにしているように見えましたが、何もかも必然性に乏しく、ヤスジローの娘チエコ(菊地凛子)も聾唖とはいえ、あそこまで悲観的で暴走するのはどうして?お父さん、そんなに嫌な奴か。母親が亡くなっている設定はラストでズドーン!!と来るはずなのに描写が曖昧だから収拾されていない。まさに不条理。
菊地凛子の存在感で救われているような作品。脱げばいいってものじゃないですが、少なからず彼女の美しい裸体からは悲痛なる心の叫びを感じることが出来ました。劇中一際目立つ日本のエピソードを最後に持ってきたのはなんか、嬉しかった気もするし。 それでも人は生きていかなければならない。
余談ですが、銃といえば予告編で見た『ザ・シューター極大射程』の方が気になりますねぇ。
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アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 監督
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出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子
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モロッコを旅行中のアメリカ人夫婦の... [続きを読む]
受信: 2007年5月13日 (日) 01時20分
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... [続きを読む]
受信: 2007年5月13日 (日) 19時47分
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受信: 2007年5月15日 (火) 22時55分
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バベル BABEL
2006年 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 監督・制作・原案ブラッド・ピット ケイト・ブランシェット ガエル・ガルシア・ベルナル 役所広司 菊池凛子 アドリアナ・バラッザ エル・ファニング 二階堂智 モハメッド・アクザム
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受信: 2007年5月16日 (水) 12時41分
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出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、役所広司、菊地凛子、二階堂智、ガエル・ガルシア・ベルナル、アドリアナ・バラーザ
評価:71点
公式サイト
(ネタバレあります)
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受信: 2007年5月19日 (土) 18時50分
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事前に情報を知らないと、どんな印象を持つ映画なのか、ありのままを
書いてみたいと思います(ネタバレ勿論あります)。
結論としては、観たくないシーンも、何箇所かありましたが、
非常に面白く観る事が出来ました。
それは、藤井隆のプロモ(※1)、小松彩夏のファンタのCM(※2)
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受信: 2007年5月23日 (水) 02時55分
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ガルシアマルケスのファションは女性の心を軽井沢のように爽やかにするブランドかもしれません。ガルシアマルケスの魅力は、バッグひとつとってもそうですが、自分らしさを表現できるファションのような気がします。ガルシアマルケスのバッグだけでなく、洋服、革製品、雑貨でも、あなたらしさを表現しても良いですし、自由にコーディネイトを楽しんでください。ガルシアマルケスのファションは、メンズ、レディースの両方に人気があります。バッグや洋服で身を包んだあなたのセンスは素敵です。ガルシアマルケスのフ...... [続きを読む]
受信: 2007年5月29日 (火) 23時40分
コメント
TBどーもです。
そうそう、延々と見せられるとちょっと苦痛ですよね。
それが見せたかったわけでもないでしょうに・・と、表現方法にちょっと付いていけない私なのでした。
投稿: たいむ | 2007年5月12日 (土) 12時59分
初めまして。TBありがとうございます。
「21g」も予告編だけでパスした記憶が…。(^^;)
登場人物全員を泣かせたり、困らせたり、傷つけたり…一体全体、この監督さんは、どうしようってんでしょうか? そりゃ、不幸のどん底みたいなシーンを延々と見せた後での、あのラストなら、そうなのかな~って思う可能性もあるでしょうけど、なんだか随分人間をバカにしているっていうのか、監督さんだけが、何でも解っていて偉いんだー!みたいな>お前等、愚か! と言われているようで、おもしろくなかったです。(暴言) 日本もモロッコもメキシコも、いいように扱われていたようで正直、不愉快でした。俳優さんたちは、とても良い演技だった、とそれは解るのですが…。
投稿: あかん隊 | 2007年5月12日 (土) 18時32分
>たいむさん、コメ&TBどーもです。
「誰かを愛することができる映画」というより、
ただ、人間の不条理を誘発する作品に見えて、、辛かったです。
投稿: たまさん(主) | 2007年5月13日 (日) 01時46分
>あかん隊様、初めまして。
◎まったくごもっともで、恐れ入ります・・(v^∀゚)φ
監督さん自身の経験に基づいているテーマの作品のようですが、人物設定が薄っぺらいというか、全てが空回りしていたような。
俳優さんたちは良い演技だったのに、都合のいい展開が目立ってしまった感じで、、惜しいです。
~またそちらへもおじゃまします。
投稿: たまさん(主) | 2007年5月13日 (日) 02時29分
どうも、お疲れ様です。6月1日公開のザ・シューター観たいですねー金曜日ですし!一日ですし!! 楽しみにしております!!!
投稿: ポストマン | 2007年5月13日 (日) 03時30分
TBどーもです。確かに時間と場所がごろごろ変わるので車酔いというかタイムマシン酔い(←乗ったことないけど)しそうになります。銃社会やらメキシコ移民やらそっちの時事問題に私の頭は行っちゃって、最後は人の悲劇に鈍感になってたような感じ。ヤスジローとチエコはあれでいいけれど、一番の気がかりはモロッコ一家の将来です。
投稿: へたれチャリダー | 2007年5月13日 (日) 12時26分
>ポストマンさん、コメントどうもです♪
ザ・シューターは必見でしょう!一日やし!! 混雑に巻き込まれぬように先見して行かねばなりませぬ。楽しみです。
投稿: たまさん(主) | 2007年5月14日 (月) 02時44分
>チャリダーさん、コメどーもです。
「タイムマシン酔い」ですか。ウマイ!
『ディパーテッド』の時、私はアメリカという国に頭が行ってましたので、いろいろ考えながら観れた・・というのと似ているかも。
ヒスパニックにも触れていた作品ですが モロッコ王国同様、未知の部分が多くて入り込めなかったというのもあります。
そのどれもが個人の感情による身勝手な行動が発端だと取れてしまいました。モロッコ一家の将来、ホンマに気がかりですね。
投稿: たまさん(主) | 2007年5月14日 (月) 03時18分